これまでの一般質問では、避難所運営や避難行動要支援者について多岐にわたる質疑を重ねてきました。最近は避難所運営マニュアル等も充実し、避難所開設訓練にも活用できる動画やツールも紹介されています。避難所で使用するツールは多言語化され、ペット防災に対する認識も広まり、同行避難の支援等すすんできていることを感じます。一方、乳幼児や授乳についての支援は、哺乳瓶や粉ミルク、おむつなど備蓄のみに焦点が当てられ、対応不足な面があると感じます。今回の質問に当たり、乳幼児家庭へ備蓄や避難所に対する認識について、簡単なアンケートを実施し約60件の回答をいただきました。その結果も織り交ぜながら質問させていただきます。
災害時はそれまでの生活環境をできる限り継続するために、乳児に必要な物品を家庭でも用意することが必要ですが、避難となった場合に備蓄品を持って出られないケースも想定され、避難所にも最低限の備蓄が必要です。
質問1-1
避難所では災害時にどれだけ乳幼児世帯に必要な物品を備蓄しているか。備蓄基準も含めてお答えください。
答弁
(保健福祉局健康福祉部健康支援課)
(保健福祉局高齢障害部障害者自立支援課)
(総合政策局危機管理部防災対策課)
乳幼児世帯には、粉ミルクや紙おむつなどを備蓄しており、粉ミルクは、人口に対する罹災者の割合と母乳育児率を出生数に乗じて得た人数に、1日に必要なミルク量と備蓄日数3日分を乗じて必要数を算出しています。さらに、この量にアレルギーの出現率を乗じた数量を、アレルギー用として備蓄しております。 現在の備蓄量は、通常の粉ミルクが713人分、アレルギー用に23人分となっており、保管は、品質管理の観点から各保健福祉センターで保管しております。 紙おむつは、人口に対する想定避難者数の割合をもとに、3歳未満児の3日分を備蓄しており、新生児用からLサイズまでの4種類、合計約4,800人分を各指定避難所で保管しております。
アンケートでは、粉ミルクが避難所になく、保健福祉センターに保管されていることについて知らなかった世帯も多く、各家庭での備蓄はまだできていないというコメントもみられました。事前に聞き取った際に、私が気になったのは、粉ミルクの備蓄を、保健福祉センターから各避難所へ配布する手順は決まっておらず、避難所からの要請に従い適宜配布していくとの考え方です。保健師などの専門人材が各避難所を巡回することは以前の答弁で伺っていますが、避難所立ち上げ時の混乱の中で、乳幼児の避難状況をどのように把握し、粉ミルクを適切に配布、そして迅速に調乳できる状況であるのか少々不安です。
液体ミルクは衛生的にお湯を用意できない場合に重宝するとのことで、
質問1-2
これまでも議会において備蓄の要望がありましたが、他自治体を研究の上、検討していくとの答弁でありました。他都市の備蓄状況の調査や、千葉市での導入に向けての検討状況はどのようになっていますか?
答弁
(保健福祉局健康福祉部健康支援課)
(総合政策局危機管理部防災対策課)
昨年度に政令市の備蓄状況を確認したところ、全て液体ミルクで備蓄している市が1市、粉ミルクと液体ミルクを併用している市が5市でした。 本年1月の能登半島地震でも長期に渡る断水が発生しており、本市においても水が使用できない状況が想定されることから、調達の方法など具体的な検討を進めて参ります。
千葉県が令和4年より液体ミルクの確保をしたと発表しています。194万円で購入、保管料月額13200円で、流通在庫としてメーカーが管理を行うため、賞味期限を気にせず、被災した時に確保できるものです。千葉市も対象と伺っていますが
質問1-3
どのくらいの量を配布してもらえるのか。被災後の配布手順と想定される到着までの時間など、千葉県の流通在庫事業の概要はどのようになっていますか?
答弁
(総合政策局危機管理部防災対策課)
(保健福祉局健康推進部健康支援課)
流通在庫による保管数量は9,900缶で、県内の被害状況や市町村からの要請状況により、配布先及び配布量を決定し、民間輸送事業者等により、各市町村の物資集積場所へ配送されるとのことです。
千葉市からも要請はできるが、県内他自治体との調整となるため、量や到着までの時間などは被災状況次第であることが分かりました。
上の図は液体ミルクと粉ミルクの市場価格での値段の比較及び必要物品等を表しております。液体ミルクは調達コストが高い、保管期限が短い、分量の調整ができないなどの理由から備蓄されてこなかったと伺っています。しかし、粉ミルクの場合には水や沸かすための道具など、調乳や消毒を含めた準備が必要であり、その分も加味して検討をされてきたでしょうか。
哺乳瓶を消毒し、ミルクの量に合わせた70度以上のお湯で溶かし、人肌まで冷ます、といった作業が必要です。ある新生児科医が行った哺乳瓶の洗浄実験によると1回2リットルが必要で、調乳用の水以外の煮沸などに必要な水を合わせると、1日24リットルでは足りないともいわれています。
質問1-4
災害時には感染予防のために衛生的にミルクを赤ちゃんにあげる環境が必要ですが、避難所での調乳環境についてどのように考えていますか?
答弁
(保健福祉局健康福祉部健康支援課)
調乳には水やガスコンロなどが必要となりますが、通常避難所には、水やガスコンロ、ガスボンベは備蓄しております。 お湯を沸かすための鍋はご自身でお持ちいただくか、避難所となる学校や公民館に備え付けのものを利用していただくことを想定しております。 なお、避難所の備品は数や種類に限りがあるため、家庭での準備の必要性についても周知に努めて参ります。
アンケート結果では避難所の備蓄状況を理解している乳幼児世帯は多くはなく、避難訓練にも参加してみたいとの声もありました。避難所運営委員会での訓練には乳幼児世帯にも参加してもらい避難室を設置するところまでイメージした訓練が必要と考えます。 また、避難所に避難していない在宅避難者や車中泊避難者は、妊産婦、乳幼児を抱える家庭といった特別な配慮やニーズがある人が多いことから、最寄りの避難所等で避難者名簿に記入することを推奨して、ニーズを把握し、女性用品や乳幼児用品を含む、必要な物資を支援する必要があります。 女性の視点をいれた物資の配布を含めた、避難所運営のシュミレーションが重要です。
そもそも災害時には災害以前の生活が継続できるよう支援が必要です。母乳育児を行ってきた人が安心して授乳できる環境を整備し、混合栄養の方も母乳の量を維持すること、それによりミルクを必要な方に渡すことができるのです。 災害が起こると食料や水の供給が不安定となり、衛生状態の悪化や保健医療ケアシステムが追い付かず、乳幼児の疾病率や死亡率が上昇することが懸念されます。 しかし、母乳には赤ちゃんの免疫を高め、感染症から守る成分が含まれるため、災害時であっても普段通りに授乳できることが大切なのです。 WHOやユニセフは、あかちゃんは生後5か月までは母乳だけを飲み、そのあとは離乳食を併用し、2歳からそれ以上まで母乳が飲めるように周囲が支援することを推奨しています。これはお母さんの義務として言っているのではなく、周りがそうできるようにサポートをすると言っているのです。これはとても重要なことです。 災害時にはストレスで母乳がでなくなったという声があがるそうですが、母乳が作られることと母乳が出てくることは一緒ではありません。母乳を作るホルモンはプロラクチンといい、ストレスに影響されることなく、赤ちゃんが吸うことで母乳がつくられます。作られた母乳を外に押し出すホルモンをオキシトシンと言い、ストレスや不安で一時的に影響を受けても再開するのだそうです。 安心して授乳できる環境をととのえ、あかちゃんに吸わせ続けることでまたでてくるようになるということです。逆に出にくいと感じてミルクを足したり、お母さんが周囲の目を気にして授乳時間や回数を制限するとお母さんの体の中に母乳が残ることで、母乳の産生量を減らすという分泌抑制が働くのだそうです。災害時には特に注意が必要で、頻繁に授乳を続けられる支援、一律にミルクを配布しない支援が必要になります。 母乳をあげるのは義務ではなく権利なので、母乳をあげている人には安心して授乳に専念できる環境整備が必要になります。災害前からミルクをあげているお母さんにはミルクを渡せばよいというだけでなく、衛生的に安心してミルクをあげられる情報とそのための細やかな支援が必要です。母乳対ミルクではないのです。これは日常時にもいえる大切な概念です。
質問1-5
避難所において安心できる授乳スペースの確保のために用意されているものはありますか?
答弁
(総合政策局危機管理部防災対策課)
避難所開設・運営マニュアル例には、避難所開設の際、普通教室や個別の部屋などを活用して授乳室を確保することや、避難所に掲示する授乳及びおむつ替えルール例を掲載しています。 また、体育館等がある避難所には、屋内用テントを備蓄し、授乳室を確保することとしております。
学校が避難所となる場合には体育館だけでなく教室の開放が前提で、体育館等の避難所には屋内用テントの備蓄があり、安心できる授乳室の設置ができることがマニュアルから理解出来ました。ただ、広さのない公民館等では授乳室の確保が難しいと考えられますので、簡易式の段ボール間仕切り等の備蓄が必要ではないでしょうか。
また、災害時にも日常とできるだけ変わらない授乳を行うため、災害時の乳児栄養法の知識と支援が重要です。 母乳がストレスで出ない気がするという心配から、またほんとうに必要な方へミルクを届けるためにも、安易にミルクへ誘導することは適切ではありません。混乱した状況の時に役立つ資料として、授乳アセスメントシートがあります。
このシートは災害時に授乳中のお母さんの話をよく聞きとり、背景と真のニーズを確認するためのもので、内閣府男女共同参画局の防災・復興ガイドラインの中に示されております。
赤ちゃんの月齢や災害前の授乳方法と被災後の授乳、回数や便と尿の回数、補足量など基礎的な情報の聞き取り項目が書かれています。母乳分泌を増やすことや母乳分泌再開に関心があるかなど被災者に寄り添った聞き取りを行い、それぞれの授乳方法や困りごとに合わせた支援に繋げることができます。
質問1-6
本市における授乳アセスメントシートの活用状況について伺います。
答弁
(保健福祉局健康福祉部健康支援課)
授乳アセスメントシートは現時点では活用しておりませんが、アセスメントは重要だと考えております。 本市は、千葉県助産師会と災害時の妊産婦等への支援に関する協定を締結しており、発災時には協定に基づき派遣された助産師と協力して支援に当たることとなるため、シートの活用方法を含めて協議して参ります。 また、各区健康課の保健師が避難所を巡回して健康観察を行う際にも、シートを活用できるよう、常備して参ります。
お母さんたち自身も事前にこのような情報にアクセスできることが望まれます。
質問1-7
乳幼児家庭向けの防災への備えの情報共有について伺います。
答弁
(保健福祉局健康福祉部健康支援課)
市ホームページで周知啓発を行っているほか、生後2か月頃に行う家庭訪問の際に配布するパンフレットに同様の情報を掲載し、周知を図っております。
これまで何度も母子避難施設の設置を要望してきました。 災害時でも、大人よりストレスを感じやすく言葉で表現しにくい赤ちゃんや子どもをどう守るか…。
できることを考えて備えることが必要です。
母子等避難施設の設置準備は各自治体でも進んできており、上の表の通り、仙台市や日立市は看護系の学校などへ、文京区や逗子市では私立大学などへ、泉大津市ではホテルの空き室を利用した避難の制度で、長岡市では子育て支援施設「子育ての駅」を、徳島県三好市ではこども園・保育所に設置がされています。対象者も妊産婦だけでなく、父親や介助する家族への広がりを見せております。
そこで、 現在障がい者施設、介護施設と災害時協定を結び、159か所が拠点的福祉避難所と位置付けているのと同様に、乳幼児を連れた家族や妊婦が避難する場所として、保育園・看護大学などと災害時協定を結べないでしょうか。公立保育所の活用なども検討できると考えます。
質問1-8
乳幼児等避難施設の設置について、市としての見解を伺います。
答弁
(総合政策局危機管理部防災対策課)
(保健福祉局健康推進部健康支援課)
指定避難所で乳幼児等を受入れる場合には、授乳室や、更衣室、キッズスペースなどを設けることに加え、成長度合いに合わせたオムツやミルクのニーズなど、配慮すべき対応が多くあることから、できるかぎり専用の部屋などを確保することとしています。 指定避難所以外に、専用の避難施設を確保することは、対応する人員も含めて、どれだけの人数分の施設が確保できるのか、確保数が少ない場合に、受け入れる方の優先順位をどう決めるのかなどの課題があると認識しています。 今後は、乳幼児等避難施設の設置について、他自治体の状況や、能登半島地震での実例などを調査、研究して参ります。
「海洋プラスチックごみ」は、生態系を含めた海洋環境の悪化や海岸機能の低下、景観への悪影響、船舶航行の障害、漁業や観光への影響等、様々な問題を引き起こしており地球規模での対策が必要です。 海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、日本の提案により、2019年6月に開催されたG20大阪サミットにおいて、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指すという「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が提案され、87の国・地域に共有されました。このビジョンの実現に向けて、個人・企業・ 団体・行政などのあらゆる主体が、それぞれの立場でできる取組を行うことが重要とされています。最近では日本財団がアスリートと共に社会課題解決の輪を広げることを目的とした使い捨てプラごみ削減プロジェクトを開始したことが話題になりました。
海洋プラスチックごみの中でも「マイクロプラスチック」と呼ばれる5mm未満の微細なプラスチックごみについて、近年、海洋生態系への影響が懸念されています。マイクロプラスチックはいろいろなプラスチック製品から発生しているといわれており、敷物、マット等に使われるパネル型のものを含めた人工芝もその発生源の一つとされています。
この円グラフは、2011年に京都大学の研究室から生まれた、環境課題を科学技術の力で解決することに挑戦している団体、ピリカが発表した調査資料、マイクロプラスチック等の流出実態調査2020年度版です。マイクロプラスチック推定商品の質量比のグラフでは人工芝が25.2%と最も多くなっています。 マイクロプラスチックの人体への影響は解明されてない部分もありますが、一部の実験により糖尿病や脂肪肝悪化が疑われています。また、母乳や血液から「プラスチック」が検出されており、体内へ取り込まれる方法として、空気中に飛散したマイクロプラスチックである可能性や、生活圏ではない北極圏でも海洋だけでなく雪の中からマイクロプラスチックが見つかっていることなど、地球規模に広がる汚染が問題とされております。オーストラリアの調査報告では1週間にクレジットカード1枚分といわれる5gを人体に取り込んでいるとされ、想像するだけで気持ち悪さを感じるのは私だけではないと思います。
質問2-1
千葉市で行ったマイクロプラスチック調査において、把握した内容とその考察について伺います。
答弁
(環境局資源循環部廃棄物対策課)
千葉市周辺におけるマイクロプラスチックの身近な現状を把握するため、マイクロプラスチック実態調査を行っており、令和3年度に砂浜・海洋調査を、令和5年度に河川調査を実施しました。
調査の結果、全ての調査地点でマイクロプラスチックが確認され、ポリエチレンやポリプロピレンを含むプラスチックの割合が高いことや、1立方メートル当たりのマイクロプラスチック濃度は、既に調査結果がある近隣自治体等における調査結果と比較して同程度であることなどが把握できました。
また、河川水中のマイクロプラスチック濃度は海水中より高い結果となったことから、マイクロプラスチックは川から流れ込み、海で希釈されていることが考えられ、これは他の研究結果でも同様の指摘がなされております。
調査の中で出てきたマイクロプラスチックを分析したのとことですが、成分のみの結果であり、原因となる物の特定を行う調査ではなかったことが理解できました。
次の図をご覧ください。マイクロプラスチックの流出が問題となっている人工芝のタイプとして左側の図のようなロングパイル人工芝と右側の図のようなショートパイル人工芝があります。ロングパイル人工芝はパイルの長さが5~6センチで、ゴムチップや目砂を充填して使用します。サッカー場、野球場、ラグビーアメフト場や多目的球技場等で利用されます。右のショートパイル人工芝(砂入り人工芝)はパイルの長さは2センチ程度で、目砂を充填して使用します。主にテニスコートで使用されます。
(1)人工芝の施設管理について
質問2-2
市内のスポーツ施設で人工芝を使用している公共施設はどの程度ありますか。
答弁
(都市局公園緑地部公園管理課)(市民局生活文化スポーツ部スポーツ振興課) テニスコートが18箇所79面、サッカー場が2箇所4面、野球場が1箇所となっております。
人工芝を設置している公園施設及びスポーツ施設の一覧を事前にいただきましたが、121面あるテニスコートのうち人工芝が現在79面と65%を占めています。しかも、人工芝のテニスコートの約半数の38面がここ10年のうちにハードコートから切り替えられていました。
人工芝は設置直後よりも、耐用年数が経過したものの方がより細かく摩耗するなど、マイクロプラスチックの流出被害が大きくなることが想定されます。更新のタイミングなど指針はあるのでしょうか。
質問2-3
テニスコートにおける人工芝の設置や更新について、今後の方針や、具体的な計画をお答え下さい。
答弁
(都市局公園緑地部公園管理課)
(市民局生活文化スポーツ部スポーツ振興課)
人工芝については、足腰への負担が少ない、降雨後もすぐに利用ができる、などの利点のため、利用者からの要望も高く、これを踏まえ、他の舗装から人工芝へ更新することがあります。 既存の人工芝の更新については、設置からの経過年数や利用状況によって、劣化状況が異なることから、各施設の状態を確認のうえ、検討しております。
今年度の取り組みとしては、新たな人工芝の設置については、あすみが丘ふれあいの広場公園のテニスコート1面を、ハードコートから人工芝へ、また、既存施設の更新については、穴川中央公園のテニスコート2面を予定しております。
特に市全体としての指針はなく、劣化の状態や市民の要望により都度検討を進めている状況がわかりました。一覧を確認すると、人工芝敷設後に一般的な耐用年数と言われる10年を明らかに過ぎている施設もあります。メンテナンスの時期については予算確保の必要もあり劣化がひどくても更新できない状況も理解するものの、今後もこのまま無計画でよいのでしょうか。
(2)流出状況の視察
今回の質問にあたり、先日、蘇我スポーツ公園内の人工芝敷設のスポーツ施設としてフクダ電子フィールド、スクエア、ヒルズコートをピリカの同行の元、人工芝のマイクロプラスチック流出状況の視察をいたしました。
上の写真はフクダ電子スクエアの芝面の様子です。緑の人工芝の間にゴムチップが多く露出している様子がみられます。また下の写真は、フクダ電子フィールドの排水溝にゴムチップが流れ出ている様子です。
次の写真は、スクエアの排水溝の蓋を開けたところに詰まっていた人工芝やゴムチップです。
次の写真はヒルズコートですが、右が令和4年・5年で20面を張り替えたばかりの現在の写真ですが、左は公園緑地課より提供いただいた更新前の状態です。
平成23年設置なので、敷設後12~3年経過の状態となります。人工芝の基布部分が破れており、危険な状態となっています。左右を比べるとパイル部分がほぼすり減った状態であったことが分かります。
実際に中を歩かせていただきましたが、新しい人工芝テニスコートはふかふかとしており、見た目にも美しく、市民プレーヤーには大変人気であることが良くわかりました。
問題はこれがマイクロプラスチックとして流出することです。
3.マイクロプラスチック流出対策について
国内各市の2つ事例をご紹介します。
一つ目は大阪府で、 「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現のため、2023年度に府内の複数のスポーツ用人工芝施設で人工芝の損耗状況の調査を行うとともに、人工芝片等の流出対策設備の設置とその効果検証を実施しました。その結果を踏まえ、人工芝片等の流出抑制の取組みをまとめた「大阪府内の人工芝施設におけるマイクロプラスチック流出抑制に関するガイドライン」を作成しました。
このガイドラインの目的 として
1人工芝をこれから導入する又は既に導入している施設の関係者(所有者、管理者、 工事発注者等)に人工芝片等の流出対策を実施してもらうこと。
2公園や緑地、スポーツ施設の設計指針などの各種ルールや仕様に人工芝片等の流出対策が盛り込まれること。
3施設管理者による施設利用者への周知・啓発を促すこと。
とされています。
2つ目の事例は多摩市です。 2023年3月、テニスコート場における流出抑制の実証実験を行った上で、【テニスコート砂入り人工芝におけるマイクロプラスチック流出抑制対策ガイドライン】を作成、公開されました。 流出抑制資材の設置の他、コート利用者との協動したフィルターの維持管理の徹底が盛り込まれています。
右のQRコードは東京新聞の2024年5月27日の記事に掲載されておりますが、最初の写真は東京都多摩市の担当課長が多摩東公園でテニスコートから出たマイクロプラスチックを手に、流出抑制の大切さを語る様子です。別の写真では、テニスコートの排水溝に設置した箱型フィルターの内部にはマイクロプラスチックがびっしりついている様子が分かります。
質問2-4
人工芝のマイクロプラスチック対策として、千葉市はどのような対策をおこなっていますか?
答弁
(都市局公園緑地部公園管理課)
(市民局生活文化スポーツ部スポーツ振興課)
令和4年度と5年度に実施した蘇我スポーツ公園のテニスコートの人工芝を張り替える工事においては、摩耗しにくい耐久性のある人工芝を使用することを条件としております。また、今年度、更新を予定している、穴川中央公園などのテニスコートにおいても、同様の対応を図る予定であります。
環境省のプラスチックスマートに登録されている摩耗に強い人工芝を導入したことについて、同行したピリカからは意識をもって業務に当たっているとのコメントをいただきました。
しかし、更なる対応策として施設内のこまめな清掃や、流出対策として、側溝フィルターやマイクロプラスチックバリア等の資材の設置が必要であると提案をいただいています。
質問2-5
まずは、芝破片やゴムチップの流出対策についての検討をすすめるため、今後、人工芝設置施設からの流出調査を行うことについて、ご見解を伺います。
答弁
(都市局公園緑地部公園管理課)
(市民局生活文化スポーツ部スポーツ振興課)
流出調査やさらなる対策については、今後、国の動向や他都市の事例を見つつ、研究して参ります。
前述の東京新聞記事にはは、国際基督教大(ICU)の小林特任教授らの研究チームが作製した、サッカーグラウンドなどで使われる「ロングパイル人工芝」から出るマイクロプラスチックの流出を、99%以上抑制できる仕掛けが載っています。
1個作製するのにかかる時間は2〜3時間で、材料費は約3000円と安価につくれることが特長だそうです。
4.周知啓発について
質問2-6
人工芝設置に関し、流出防止等の対策や、劣化した際の迅速な交換に関する啓発を行うことについて千葉市のご見解を伺います
答弁
(環境局資源循環部廃棄物対策課)
(市民局生活文化スポーツ部スポーツ振興課)
本年5月28日付のスポーツ庁からの事務連絡「人工芝を発生源とするマイクロプラスチックの流出抑制に係る周知協力について」を受けまして、人工芝を使用する施設管理者やご利用者に対しては、環境省が作成したパンフレット等をご活用いただき、マイクロプラスチックの発生抑制対策に取り組んでいただけるよう、庁内各課に周知したところでございます。 また、市民への周知としては、人工芝に限らず、屋外で使用するプラスチック製品の取扱について、マイクロプラスチックの発生を防ぐために、劣化したら新しいものに買い換え、古いものはごみとして適正に排出する、使用しない場合は屋外に置いたままにしないなど、プラスチック類の適正管理や適性排出を心掛けていただくように、引き続き、周知啓発に努めて参ります。
スポーツ庁からの連絡には、各企業や団体によるガイドラインの作成についても言及されています。このガイドラインでは流出対策の具体的な内容も示されています。今後こちらの周知もお願いします。 また、市有施設の維持管理者に対しては、本通達を周知するだけでなく、具体的な対策方法について検討を進めることを求めます。民間の人工芝設置のスポーツ施設や、ホームセンターなどの人工芝販売事業者へのポスター掲示を依頼するなど、的確な周知啓発を求めます。
5.今後の人工芝設置について
海外の動向ですが、EUでは意図的添加とみなされる人工芝及び充填材は8年の移行期間を経て完全に使用禁止となるため、代替策の運用が急務となっています。天然素材の人工芝または天然芝への張替えが必要となると予測されています。
アメリカでもボストン市では都市公園で有機フッ素化合物が検出されていることから人工芝を禁止しており、カリフォルニア州でも住宅地での人工芝を禁止する法案を採択しています。 メジャーリーグは天然芝が大多数で、選手による天然芝への要望行為がおこなわれております。 日本においても生分解プラスチックの人工芝など競技用で開発が進む可能性もあります。
一方で、車で有名なトヨタではコスト削減ができて、CO2発生を抑えられる特色ある芝生をつくっています。草丈が短いトヨタの芝生は芝刈りの回数が少なくて済むため、維持管理が圧倒的に楽だとのこと。芝刈りの回数が減ることで芝刈り機の燃料に由来するCO2も抑えることができます。
また芝刈りの回数が減ると、葉に含まれる養分が抜けにくく、肥料も半分以下で済みここでもCO2発生を抑えられると言います。 また、テニスコートに関しては元プロテニス選手の伊達公子さんが世界で活躍する日本人テニス選手が、日本でほとんど育たない理由として 「砂入り人工芝コート」が標準的に利用されているからだと述べており、これを支持しているプロプレーヤーも多く居ます。